DX実現を担う人材はどこにいるのか
巷では「DX人材」や「デジタル人材」という言葉が飛び交っていますが、「DX人材不足」「デジタル人材不足」ということで、ツチノコやネッシーみたいな雰囲気が出ています。
ここでは、DX実現を担うこの登場人物たちを紹介しようと思います。
1、DX人材とデジタル人材
DX人材とは、経済産業省「DXレポート2.0(中間取りまとめ)」で以下のように定義されています。
ここでいう「DX人材」とは、自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材を指す。さらに、DX人材には、社内外のステークホルダーを自ら陣頭に立ってけん引し、DXを実行することが求められる。
経済産業省「DXレポート2(中間取りまとめ)」より
DXにおける旗振り役として、自社ビジネスとデジタル技術を理解しており、企画構想から計画策定、マネジメントもできるスーパーマンです。
どこを探したらいるのでしょうか。これらをフルセットで備えた人材は、探すだけでも中々骨が折れることが想像できます。
ただ、DX実施においては常に登場し続ける重要なポジションとなります。
では、デジタル人材はどうでしょうか。
経済産業省とIPAは「デジタルスキル標準(DSS)」を定めて、デジタル人材のスキル・マインドを身に着けるための指針を出しています。
中でも、DXを推進するためのスキルを「DX推進スキル標準」として、5つの人材類型を定義しています。
IPA「DX推進スキル標準(DSS-P)概要」より
詳細は後述しますが、DX人材よりはエンジニア寄りの人材であることがうかがえます。
DX人材とデジタル人材、言葉の雰囲気は似ていますが、役割が異なります。
DX人材は経営企画に携わる方、というのがイメージしやすいです。いわゆる「DX推進担当」ということで、構想や計画を立てて経営層の意思決定を促し、実際にDXの推進を行っていきます。
一方で、デジタル人材はDX構想を形にするために活躍する人材です。ぱっと見は今までのシステム開発プロジェクトに携わってきた役割にいい感じの名前を付けたように見えますが、プロジェクトに囚われず全社横断的に活動する人材類型もありますので、一概には今まで通りの体制で問題ない、という事にはならないと思います。
DXを進める上で、こういった人材を取り揃える必要があるのですが、この人たちは一体どこにいるのでしょうか。
2、DX人材はどこにいる?
まず、自社にフィットしたDX人材は探せば見つかるようなものではありません。自社のビジネスを理解しているのは自社内にしかいないでしょうし、加えてその人がデジタル技術のトレンドを常に追いかけていて、企画構想やマネジメントスキルに長けているのであれば、その人はDX人材です。大切にしましょう。
自社内におらずとも「いやいや、DXに詳しいベンダに任せればいいじゃない」となるかもしれませんが、権限や役務を考えると丸投げは難しいです。
DXは企業が自ら変革を主導することにより達成されるものである。DXを推進するには、構想力を持ち、明確なビジョンを描き、自ら組織をけん引し、また実行することができるような人材が必要となる。このため、DXを推進するために必要となる人材については(外部のベンダー企業に任せるのではなく)企業が自ら確保するべきである。
経済産業省「DXレポート2(中間取りまとめ)」より
自社の変革をベンダーに全て委ねてしまうと、変革した姿が自社内で把握できなくなり、ひいてはロックインの温床となりかねません。部分的に任せる形ならコントロールは可能ですので、そこは協力の仕方かと思います。
では、このツチノコのような人材をどう確保するかというと、以下のいずれかが現実路線かなと思います。
- 自社内の人間をDX人材に育て上げる
- それぞれ必要な知識・スキルを持った人達の組織体を作る
後者については、部分的にベンダーの協力を得られるという利点があります。DX推進担当はチームとして編成すべきであり、必要な人材要件を明らかにし、それぞれの特化型人材を確保していくのが現実的であると思います。
3、デジタル人材はどこにいる?
まず、デジタル人材については、先述の通り「DX推進スキル標準」にてその類型が紹介されています。
ざっくりと一言で紹介すると、
- ビジネスアーキテクト
- DXで実現したいことに向けて、全体構想や組織、プロセスなどの設計を行う人
- データサイエンティスト
- データ利活用を実現し、業務改革やビジネス創出する人
- デザイナー
- サービスデザインする人
- サイバーセキュリティ
- セキュリティ対策する人
- ソフトウェアエンジニア
- システム構築・運用する人
この中で、DXを始める準備で活躍するのがビジネスアーキテクトとなります。その他は、DXを進める中で実際にモノを作ることになる際に活躍する人材となります。
それぞれレベル感はあれど、日本では主にITベンダー企業内にいる人が多いのではないでしょうか。
ほぼ専門職なので、この辺りの人材をゼロベースで教育していくとなると、期間やコストが大きくかかっていきます。ベンダーとの協業やサービスの活用などで進めていきつつ、社内教育による内製化シフトやM&Aなどで新たな価値創出を持続できる体制を整えていくのが良いかなと思います。
おわりに
人材の確保はどこの企業様も苦労されていると思います。全ての人材を取り揃えてから、という動き方はされないと思いますので、DXに至るまでのフェーズを考慮して、その時必要な人材を育成やベンダー協力などで確保していくことになります。
デジタル技術によりビジネスを変革するにあたって、どこの部分を自社要員で押さえるべきかが肝要になるのではと考えています。
また、ここまで書いたことについても、IPAの「DX白書2023」にて様々な切り口で語られています。
特に、人材確保についても各社の取組内容が紹介されていますので、参考になればと思います。
執筆者
北海道DX事業部
寺江 慎佑